N爺の藻岩山麓通信


札幌・藻岩山麓を基地に旅するN爺のブログです(写真は原始ヶ原から富良野岳)
by waimo-dada

秋の京都歩きⅡ

 東福寺の人ごみを脱出して北に向かう。目指すは智積院(ちしゃくいん)と河井寛次郎記念館。
 この時期の京都はコートなしで歩くのにちょうど良い。わたしも連れもパパスの厚手のジャケットにコットンマフラー、スカーフを標準装備。薄いフリースの帽子と薄手の手袋もあるから寒さに対応できるし札幌に戻ったときの心配もない。
 そうしてぷらぷらと歩けば観光ゾーンにない普段着の町家、店屋、通りを見るともなく見ることができるし、街なかの小さな祠にも会える。
 通りに面して明るく開いた智積院の境内は一転、静かなものである。
 長谷川等伯・久蔵親子が制作した国宝の障壁画や利休好みという傑作庭園を前後左右の人的圧力なしにゆるゆると楽しめる。紅葉の名所、スポットといわれるところが観光客を強力に吸引するので、その反作用でアートな寺院や御仏をじっくり鑑賞できるのはじつにありがたい。
a0248862_22375721.jpg

a0248862_22444572.jpg

 さて、次の目的、敬愛する陶芸家河井寛次郎さんの記念館はどこだろう。
 少し道に迷ったかなと思ったときに尋ねたご近所の方らしい中年の女性が、近くまでご親切に案内してくださった。
 河井寛次郎記念館は急ぎ旅の人は寄らないほうがよい。寛次郎さんのパワーある作品、ユーモラスな作品、自由自在なアトリエ兼お住まいであったところは、なにを求めるでもなく立ち寄った旅人に優しく微笑むにちがいない。実際、居合わせた数少ない訪問客はどなたももの静かで、記念館になじんでいた。それもこれも運営にたずさわる人々の仕事を含めて、すぐれた文化施設がそなえる力によるものだろう。
 「私どもにとっては、皆さんにこの記念館をご覧いただいたあと、何かの美、何かの感動、何かの驚き、何かのやすらぎを覚えて下されば無上の喜びでございます。河井寛次郎記念館」(同館のリーフレットより)
 
a0248862_224616.jpg

a0248862_22465214.jpg

 夕飯はおばんざいの店と決めていたが読みが甘かった。週の半ばなのに四条河原周辺、高瀬川沿いのこれという店はどこも予約を含めて地元の若い勤め人風のお客さんで満席。高瀬川に面した和食店「高瀬川くりお」でコースものを食す。
 そしてまた歩く。東に針路を取って石塀小路、ライトアップされている高台寺へ。こうなると人気観光コースだから四の五の言わずに夜間も公開している清水寺までぷらぷらと歩く。
 朝から夜まで、安くないウォーキングシューズと特製の中敷きが大いに働いて主人に貢献する一日となった。

 2日目は北の上賀茂神社から南の下鴨神社、西の大徳寺から東の漫殊院界隈。この4つの社寺を公共交通と徒歩でテキトーに結ぶ。
 ハイライトその一は水の道である。上賀茂神社周辺の水路、賀茂川沿いの歩道、飛び石。ぽこぽこと歩くほどに京都の水と川筋が目と足になじんでくる。旅をしているなあーと体が喜び、心がほころんでくる。
 ハイライトその二は大徳寺の大仙院や竜源院、瑞法院という人気の少ない塔頭である。規模は小さいが石庭がいい。楓の紅葉がきれいな髙桐院をついでに観光したが、人ごみを気にしなければそれなりに楽しめる。
 ハイライトその三は予定になかった貴船・鞍馬に向かう叡山電車の「もみじのトンネル」ライトアップ。のんびりと歩いていたら夜になった。そんな観光客に「次もありますわ」とささやいて観光消費の実をあげる京都観光は見事というほかない。
a0248862_2248634.jpg

a0248862_22485756.jpg

a0248862_22495224.jpg

a0248862_22504419.jpg

3日目は筋道を立てて歩くというか王道を行くというか、紅葉で賑わうスポットをかわしながら。
 出発はわたしの定番「法然院」。観光寺ではないが一部の人に人気のあるところだ。今回は幸いにも墓参にいらしていた方から谷崎潤一郎夫妻の墓を教えていただき、訪れることができた。しだれ桜の下に小さな墓石、「寂」と「空」の二基。「寂」は潤一郎・松子夫妻の墓、「空」は松子夫人の妹夫妻の墓だという。
 「森林太郎墓」と実直に刻まれた森鴎外の津和野の墓を剛とするなら、谷崎の京都の墓は柔。ともにわが国が誇る文人の墓である。
a0248862_22515119.jpg

a0248862_22523721.jpg

a0248862_22531942.jpg

a0248862_22535814.jpg

 哲学の道をたどり、特別公開していた安楽寺に寄り、僧侶から法然ゆかりの寺の由来を聞く。一帯は静かである。ときが静かに流れていく。拝観料が惜しくない。
 そこから紅葉で賑わう永観堂の脇をすり抜け、南禅寺の水路閣から琵琶湖疎水に誘われるように町に下りていった。国立近代美術館で豪勢な「上村松園展」をゆるゆると観て、今戒光明寺を訪ねれば今回の旅も終わりに近づく。
 仕上げに祇園の一角にある民営の何必館(かひつかん)・京都現代美術館でフランスの写真家「ウイリー・ロニス展」を鑑賞し、近くの洒落た店で婦女子へのお土産を買えば旅は終わるはずだった。
 が、その後、西本願寺を訪ねて一休みした。なぜそうしたのか。頭のなかの地図と足がそうしたのである。たぶん、次回は旅のしまいに東本願寺を訪ねるだろう。

写真注)以下は順に、哲学の道、安楽寺境内、何必館の光庭、白川の一本橋(行者橋) 
a0248862_2254469.jpg

a0248862_2257745.jpg

a0248862_18431736.jpg

a0248862_2303468.jpg


 大学山岳部先輩のKさんからメールをいただいた。
 「通信拝見。紅葉の京都など行くものか、と思いながらも、どこがお勧めだろうかなどと考えています。案外いいのは京都御所、広大で少々人が多くても目立たない。この周辺には静かな神社や同志社の古い建物や新島譲ゆかりの地など(今は避けた方が賢明)があります。八重さんが最初に勤めた「女紅場(にょこうば)」というのは「府立第一高女」の前身、我が母校の鴨沂(おうき)高校の前身でした。ここから北上して鴨川の河原を北山を眺めながら、下賀茂・上賀茂神社をたどるのもいいと思います(かなり歩きます)。また銀閣寺の裏山から大文字山に登って滋賀の宮、三井寺にぬけるコースもいい。京に田舎ありです。
 いずれも50年前に私が親しんだノスタルジックコースです。気力体力が回復したら、ご一報ください。京都の穴場をお教えします。でも半世紀、京都はもはや他人の街なので、今も良いかどうか保証できません。」

 学生時代に京都御所近くのKさんの実家に泊めていただいたことがある。簡素ですてきなお家だった。そのときもずいぶんと歩いた。街なかでしこたま飲んでから円山公園のあたりを早足に案内されて息が切れた。
 Kさんのメールにある「銀閣寺の裏山から滋賀の宮にぬけるコース」は知らないし、修学院離宮や泉涌寺(せんにゅうじ)など、知識はあっても歩いたことのないところがまだまだある。
 山越えもしたいし、町家の宿にも泊まりたいなあ、となると次回の京都は初夏だろうか。
by waimo-dada | 2013-10-29 23:09 | 山と旅
<< エゾリスは働き、ヒトは湯浴みする 秋の京都歩きⅠ   >>