N爺の藻岩山麓通信


札幌・藻岩山麓を基地に旅するN爺のブログです(写真は原始ヶ原から富良野岳)
by waimo-dada

半径30分の街で暮らす

 わたしはふだん、片道30分の棲息圏に暮らしている。このごろはとくにそう。
 ひと月の半分は出張でね、と以前は忙しさを自慢していたのに、人は変われば変わるもの。歩いて30分の範囲で暮らすことに慣れ親しむと「ガンガン行こうぜ」が「ビスターリ、ビスターリ」となった。藻岩山麓通りをジョギングしながら「ビスターリ、ビスターリ」。
 それですんでいれば何も問題がないのに、ある日悪魔が耳元でささやいた。「ジョギングでキタラなんてどう?」。真冬に体育会系と文化系が結婚するいいアイデアだ。
 それで札響の定期公演に本当に出かけてしまった。ジョギングスタイルで着替えも持たずに。汗かきではないが汗臭くはなかったと断言できないし。アイデアに酔って、またまちがいをしでかした。
 前のまちがいは体育会系同士だから罪は少なかった。北海道が一番寒いときにテニスラケットを背負ってクロスカントリースキーでインドアテニスに出かけよう。われながらいいアイデアに思えた。実際、テニススクールの仲間から「まあすごい」と喝采を浴びたわたしは立派なスポーツマンに成長したような気分。おれの人生はまちがっていなかったのだ。
 が、まちがいをしたことは帰りの夜道ですぐにわかった。ワックスを塗っていないクロカンスキーで上り道を歩き続けるというゴージャスな体験がわたしを待っていた。けれど、自分が罰を受けただけでだれにも迷惑をかけていないという点では「ジョギング札響事件」よりずっとましだった。
 
 そんなことがありまして、責任を取って札響の定期会員をやめました。
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 いまの住まいは都心の大通に徒歩とバスで25分、もう走らないことに決めたキタラに歩いて30分、中央図書館にジョギングで15分。便利なうえにRC造ながら山小舎の感じがするので選んだ。3階建ての中古集合住宅で、三方に木々がある。エゾリスが棲んでいる。ベランダの1m先のモイワボダイジュの枝のうえで上手にクルミの実をかじって開けて、食べる。ときどきこちらを見る。つまり実演付き。そこにわたしが棲んでいる。
 玄関は登山口でもある。藻岩山の北斜面は1921年(大正10年)に国の天然記念物に指定されている。30分も歩けば浅い沢型に50株ほども咲くシラネアオイの園がある。お花畑というには暗く、小規模だが、毎年強い生命力に会うことができる。少しずつだが年々増えている。花の盛りにシラネアオイに出会える人は幸せだ。奥行き30分の街のはずれに縄文時代から続く自然がある。

 藻岩山の麓にひらかれた単純明快なつくりの街。藻岩橋のあたりが豊平川扇状地のかなめなので、札幌は豊平川と藻岩山なしに語ることができない。娘と共同で始めた車で20分ほどのカフェの売りは豊平川扇状地の地下水であり。
 この街は歩いても走っても、どこかだれかの手のひらのうえで暮らしている感じがする。
 そう思って手のひらを開いてみた。手のひらは扇状地に似ていた。
 
 
by waimo-dada | 2012-05-17 12:28 | ライフスタイル
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